老婆100's <青春>

物語いろいろ、人生道草

夕暮れ

すっかり葉を落とした木々の向こうに暮れて行く明かりが名残惜しい。 そろそろ寒々とした暗闇となる。そんな時間帯はあまり好きではない。 それには理由がある。戦後間もない幼いの頃、薄暗い電灯一つの部屋でただひとり、親の帰りを待つ時間が長くて寂しか…

- 芒 -21.ガード下の靴磨き

生活保護を受ける事が出来てひと息ついたとはいえ、食べることがやっとのような気がした。給付されたお金で、待望の雨靴と傘を買ってもらった。母親は、運動靴も底が擦り切れて穴が開いているので買い替えてくれた。そのようなものを買った為に、お金が減る…

浅草の町並み

所要で浅草寺雷門の通りを歩いた。 通常なら平日でも観光客で混みあい活気ある光景を、今日は見られなかった。仲見世から浅草寺への通りも寂しく感じた。 コロナ禍の自粛で、疎らな雷門を見て商売をされている方々のご苦労が察せられる。伝統文化の残る観光…

- 芒 -20.生活保護

給食費や他の集金が長い間滞っているため、まり子は給食が受けられなくなった、先生は「明日から弁当を持って来てね」とまり子の耳元に小声で言った。母親は、芋やメリケン粉を水で練って焼いた代用食など、何とか工面してくれた。昔粗末な弁当で恥ずかしい…

- 芒 -19.朝鮮人のクラスメイト

クラスには同じ部落に住む同級生がいた。広い範囲に及ぶ部落なので、遊ぶ事も話す機会もなかった。通学時に見かけて気にはなっていた。クラスでは男の子に「おまえくさい!」「シラミがうつるから向こうに行け!」などと揶揄われるのを度々見かけた。泣いて…

いちょう祭り

大通りの両脇に、高く聳える銀杏の木は、黄金色の盛りも終盤に向かっている。 例年この時期は、ちょう祭りが開催され、黄色く染まった通りを鑑賞しながら<元気に歩こういちょう並木!>をモットーに各イベントを楽しむ人達で賑わう。観光スポットとして人気が…

-芒-18.鉄屑拾い

部落には貧しい人たちが肩を寄せ合って生きていた。 リヤカーを引いて鉄、紙、布屑などを拾い歩くバタヤといわれる人や、日雇い、船乗りなどの仕事を耳にした。女、子供たちは、近くの倉庫が立ち並ぶ岸壁で、監視人の目を盗んでは荷下しからの落ちこぼれを拾…

母の匂い

週末の休みには愛犬の補助食を作り置きする。野菜をみじん切りにして煮込み、ドックフードに混ぜあわせて食べさせる。老犬の目ヤニと皮膚の湿疹が気懸りになりビタミンを補充したいと考えて10日分を冷凍している。 今日は、乱切りにした野菜を みじん切りの…

カラスとの闘い

燃えるゴミ回収の日、所定袋に纏め浅いかごに入れ、いつものように玄関前に出しておいた。帰宅すると、カラスが生ごみを漁ったのか、其処此処に散らかった跡が見受けられた。今までには無い事だった。 今度は、ご近所の真似をして、門塀にフックを高い位置に…

- 芒 -17.穴掘り・事故

母親は、男達に混じって穴掘りに明け暮れた。特に女であるため後ろ指刺されまいと男以上の仕事を熟そうとした。掘って出てくる土は、穴の両脇にバランスよく積み上げられ山となり限界になると一輪車で運び出される。山は穴の中にいると背丈以上となり生き埋…

学生さんに感動

コロナ禍の前は、電車で座れるように早朝家を出て目的地には7時頃着くようにしていた。 明け方3時4時に目覚めてしまう老婆には、到着してからの一休みが向いている。カフェでモーニングをオーダーしてコーヒーを味わうひと時が心地よい。 会社へ向かう途上で…

コロナ感染症第3波が怖い

毎日のようにコロナ感染者数の最多が報道される。 若手から高齢者迄幅広い層に及んでいる。老婆でも感染して死ぬのは怖いので、時間短縮勤務と在宅勤務を併用して、乗客が比較的少ない電車を利用している。スマホにココアをインストールして確認している。 …

- 芒 -16.雨降り

母親は雨で仕事を休んでいた。まり子は母親が居てくれる事が嬉しかった。前借りをして溜まった集金、給食費など、各々集金袋にお金を入れてくれた。「落とさないように!」と何度も念を押された。 まり子は雨の日は友達と学校に行かない。傘や雨靴が無いので…

落葉のアート

色彩豊かな落葉で散りばめられた光景は動くアートになる。 群れを離れた一羽の鳩にも哀愁が漂い晩秋にしか観られない貴重さを感じる。素人ながら止まって画帳に描きたくなる。 思えば、老婆は学生の頃に描いた水彩画が、展覧会で賞を頂いた事があり「自分は…

都会の紅葉

ビルの合間の木々が紅葉の盛りとなり、枯れ葉が風に晒されて行き交う人の足元を抜けてゆく。 日向がポカポカで気持ちいい月曜日の朝、商業ビル前の円形花壇の周囲は、距離間をおいて開店を待つ人やお年寄が寛いでいる。 老婆は、この光景に一瞬コロナ禍であ…

- 芒 -15.疲労困憊

モンペに地下足袋姿の母親は、早朝から夜遅くまで土方仕事で明け暮れる。 つるはしを振り上げ力一杯地面を叩いて土を解しスコップで掬い揚げ、深く掘り下げながら距離を伸ばしていく仕事だ。穴の深さは自分の背丈以上になる事もあるという。過酷な力仕事は母…

現役の身だしなみ

老婆は髪染めを欠かさない。 団塊世代の現役は、引けを取らないために老ける身体の隠匿に涙ぐましい努力をしなければならない。たぶん髪の毛は白髪80%だと思う。いくら面倒でも手は抜けないのだ。更年期を迎えた頃、いつものように美容室で染髪したら頭皮に…

桜の木の四季折々

月に一度、歯科衛生士さんによる口内ケアのため真面目に歯医者へ通っている。 歯石除去、クリーニング、ブラッシング指導など、残り少ない歯を必死で守っている。長い間、仕事との両立で十分な睡眠がとれない状態が続き、朝夕の歯磨きは急ぎ足だったと顧みる…

- 芒 -14.穴掘り

特に敗戦後のGHQによる占領下の時代では、誰もが生き抜くために廃墟と化した中から乏しい食料を必死に求めていたという。母親も有りっ丈の着物、持ち物を、食べる物に変えて凌いできた苦労話をよくする。明日はどうしようかと思いあぐねて絶望的になり死…

- 芒 -13.立退きと解雇

母親の魚箱作りは正確な釘打ちで箱の出来栄えが良く、時間当たりの出来高も高く、女だてらにと評判が良かった。配給のお米を買うことが出来るようになっていた。お腹一杯は無理にしても食べる事ができた。 そうしてやっと掴んだ、貧しいながらも安定した生活…

居眠り

座れると快適な通勤電車、今日は久しぶりにスマホで将棋を楽しもうと考えた。 囲いは万年矢倉、だからコンピーター側に振り飛車されたりすると対応に困るほどのド素人なのだ。指し損じたら自分が勝つまで何度でも「待った」が出来るから老婆向きだと思う。 …

- 芒 -12.立退きの不安

不法に占拠しているこの部落に、立退きの話が進めせれているようだった。 行き場が無く住み着いている人々は、勿論、挙って断固反対しているようだ。 まり子が住む箱作りの場所も対象である。 特に仕事場として占拠している事が問題だという。早い段階での立…

愛犬の逃亡

朝の散歩道でインパチェンスと思われるピンクの花を見つけた。 どうもカラフルな花に眼が止まるようだ。手には、犬のリードとエチケット用品を入れた手下げを持ち、スマホで見栄え良い撮影を試みていた。 愛犬は先へ行こうとグイグイ引っ張り、もたついてい…

マイナポイント

コロナ禍での消費活性化で国が実施するマイナポイントにあやかりたいと考えた老婆は、マイナンバーカードの申請をしていた。 2ケ月近く待ってやっと受け取りの通知があった。 それも予約しなければならず土日を指定すると12月後半まで待たなければならないた…

- 芒 -11.先生の言葉

二年生も終わりを迎える頃、クラスの中ではまだ消極的なまり子だった。 昼休みは運動場で遊ぶようになっているがいつも一人でいた。すべり台、ブランコ、シーソー等の遊具があるところは大勢が集っていてとても入れなかった。縄跳びやドッチボール、追っかけ…

晩秋の雑草

雑草の合間に、盛りを過ぎようとしている僅かなセイタカアワダチソウが名残惜しそうに鮮やかな黄色を主張している。 植物に知識が乏しい老婆は立ち止まってスマホで情報入手。 9月頃のつぼみには体内の毒素や老廃物を排出してくれる作用があり入浴剤として重…

- 芒 -10.貧しい人々

まり子が過ごす朝鮮人部落の人々の生活は貧しかった。 周囲の人達は、ニコヨン、廃品回収、魚捕獲網作り、屑鉄集め等を生業としていた。岸壁で貨物船の陸揚げがあるときは、零れ落ちる小麦、砂糖などを拾い集めた。海で魚釣りをして凌いでいるようだった。 …

ひっそりと紅葉

常緑樹コニファーの隙間から迫り出す可愛らしいツタの紅葉。 共存する樹木の緑と小さい赤とのコントラストが絵になると老婆の独り言。 深まる秋の観賞も束の間、休日の今日は、晴天との予報にやるべき家事が頭の中を駆け巡る。 洗濯、掃除、冬支度など段取り…

- 芒 -9.朝鮮人部落

住み始めた家の辺りの様子に慣れてきた。 古ぼけたトタン屋根、壁をトタンで覆ったバラックが密集して大勢の人が暮らしていた。隣近所からは朝鮮語で喧嘩をしているような騒々しい会話が筒抜けてくる。 母親から朝鮮部落と聞かされた。 便所は共同で3分くら…

早朝の道草

愛犬の散歩を兼ねて近くのコンビニへ向かう。 途中見つけたマーガレットと勘違いする白い花。 今の時期ではないので菊だと勝手に判断した。図書館で調査する案件が増えた。 その隣に咲いていた今盛りの真っ赤なケイトウ(鶏頭)。 朝鮮中国(韓藍といわれる)か…