老婆100's <青春>

物語いろいろ、人生道草

- 芒 -5.運動会とノートと鉛筆

おじさんに怯える暗い生活は続いていた。

母親のわずかな稼ぎは、ヒモおじさんの煙草代、酒代に費やされているように思えた。煙草が買えない時は、「吸い殻を拾って来い!」と命令されることもあった。

まり子はいつもお腹がすいていた。吸い殻をはじめ、食べられそうなもの、お金は落ちていないか、いつも何かを見つける眼つきで下を向いて歩く子供だった。

時々、そんなまり子に母親は密かにポンせんべいをくれた。「早く食べて!」と急かせる。おじさんに見つかっては大変なんだろう。まり子はポンせんべいを半分にして「お腹すいていない」と言って母親に渡し必至で頬張った。母親は食べずにまり子に返した。

 

学校では悪ガキの目につかないよう息を潜めていたが、相変わらずだった。

休み時間は、皆と遊ぶ事は無く、誘われる事も無く、ひとりで何度も消しゴムで消しては重ねて使っている薄黒くなったノートに文字を丁寧に書いていた。鉛筆が無くなる、消しゴムも残り乏しい。お金に困っている母親に「買って」とは言いにくかった。

おじさんが酒を飲まなければ、煙草を吸わなければ買って貰えるかもしれないのにと憎らしく思った。

教室のゴミ箱が気になった。覗きたかった。誰も居ない昼休み、ゴミ箱から同級生が捨てた短い鉛筆を一本見つけた。そっと握りしめ辺りを見まわした。

 

運動会が催された。その日は、どこの家族も運動場の隅に蓆を敷いて、奮発して作った贅沢なお弁当を囲む事を楽しむ行事でもあった。

母親は稼ぎに出なければならない。日銭で暮らしているから来てくれない。その日は芋を潰しておにぎりの形に握ったものを風呂敷に包んで持たせた。母親の精一杯の思いやりであった。まり子はひとり木陰に隠れて食べた。

閉会式が行われた。整理体操、挨拶などが終わり、生徒全員に参加賞が配られた。

ノート1冊と細長い紙袋に入った2本の鉛筆が貰えた。

まり子は心の中で小躍りした。嬉しくてたまらなかった。

続く・・・

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