老婆100's <青春>

物語いろいろ、人生道草

- 芒 -15.疲労困憊

モンペに地下足袋姿の母親は、早朝から夜遅くまで土方仕事で明け暮れる。

つるはしを振り上げ力一杯地面を叩いて土を解しスコップで掬い揚げ、深く掘り下げながら距離を伸ばしていく仕事だ。穴の深さは自分の背丈以上になる事もあるという。過酷な力仕事は母親の体力の極限を超えていると思えた。帰ってきたらそのまま倒れ込み寝込んでしまう事も度々あった。

まり子は、そんな母親を少しでも楽にさせたい思いから見様見真似で、夕飯を支度した。七輪に薪を焼べて、鍋に水を入れ、そこに摘んできた蓬と残り少ない代用うどんを少し入れて醤油を垂らし煮立つのを見守った。母親に食べてもらいたい一心で帰りを待った。母親は涙を流しながら食べて、汚れた体も拭かずにそのまま煎餅布団に潜り込んだ。そんな生活の繰り返しが続く。

まり子は、学校から帰って宿題を済ませたら、明るいうちは、いつもの遊び仲間と缶蹴や縄跳びをして遊んだ。暗くなると、遊んでいた子供たちが一人ふたりと帰ってしまい、自分ひとりになるのが寂しかった。

共に住んでいる男の人も夜は遅いのでまり子は家の中でぽつんといる事が多くて怖かった。電球のスイッチを捻って点し、薄暗い中で、粗末なご飯の支度を済ませて、ラジオも無いので教科書を広げて読んだり、漢字や九九を練習したりした。

お風呂は無く、洗面器に水桶から柄杓で水を汲み、顔や手足を洗った。塩を人差し指につけて、歯を磨くように撫でた。母親が帰らないうちに眠ってしまう事も多かった。朝起きると母親は居ずに、団子汁が出来ていたりした。疲れが取れないまま、まり子の好きな団子汁を作って今日も過酷な仕事に行ったのだ。

お風呂といえば、後悔することがあった。バラックの近くに公衆浴場があり、週に一、二度母親に連れられて行った。今は、土方仕事の休みは雨の日なのでその日しか行くことが出来ない。時々「一人で行くように」と、お金を持たせた。まり子は、そのお金を紙芝居の水あめ代に使った事がある。髪を水で濡らし、固形の洗濯石鹸を減らさないよう少し使って手足顔首を洗い、風呂屋に行った体を装った。しかし体臭でばれてしまい怒られた事があった。まり子は母親が苦労している事を忘れて、遊び仲間と同じようにお小遣いが欲しいと不満に思ったりした。

続く・・・

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