老婆100's <青春>

物語いろいろ、人生道草

- 芒 -29.ねえやの恥じらい

キヨは、仕事や来客の対応に大分慣れて手際が良くなっていた。時には深夜になることもあるが鈴で呼ばれたらすぐ動けるよう台所で待機していた。

税関長宅では、演奏会やダンスパーティーなどがよく催されて多くの人が集まった。親しい方々や部下のようだ。こんな日は、キヨにとっても楽しいひと時でもあった。ホールから流れてくる音楽にウキウキした。ハミングしながらの洗い物など片付け作業が心地よかった。奥様は、そんなキヨの様子を何度か目撃した。ある日「ねえやは音楽が好きでなのですね。練習してごらんなさい」と言ってご主人が使っていないという古いギターを差し出した。キヨは、触ったこともないギターに戸惑ったが、”爪弾きたい!”という意欲に駆られた。「奥様、申し訳ございません。弾き方がわかりません。」というと、ひとりの青年を呼んで「ねえやに分かりやすく教えてあげて下さい。」と指示をして立ち去った。

男性はギターを手に取り太い弦から細い弦の音を覚えるようにと、丁寧に一弦毎に弾いて聞かせてくれた。キヨは、男性と会話する機会はほとんど無かったので胸が高鳴り、震えた。恥ずかしくて返事もぎこちなかった。男性が手書きしてくれた弦の図の上に置く指のメモを見ながら練習を重ねた。そんなことをきっかけに、演奏会があるたびに数人の男性が、キヨのいる台所に立ち寄っては弾き方を教えながら談笑した。「覚えが早い!」と褒められ嬉しかった。

続く・・・

f:id:roba100:20201221211727j:plain