老婆100's <青春>

物語いろいろ、人生道草

-芒-32.妹との再会

その後、妹の千恵は、キヨを頼って台湾に来ることになった。警察官と港へ迎えに行った。船から降りてくる人達を目で追った。遠目でもその風貌に、お互いが”確かだ”と確信した。大人になった妹との再会、懐かしさが込み上げてくる。

「姉さん!」妹は泣きながら飛びついてきた。「ちぃちゃんかね、よう来たね」と、キヨは千恵の背中を擦りながら涙が溢れた。十数年の隔たりはいっぺんに吹き飛び、厚い血のつながりを感じ愛情が沸々と湧きあがった。

妹の境遇といえば、母親の実家で気兼ねをしながら貧しい暮らしをしたと聞く。学校にも行けなかったようだ。キヨは、何としてでもこの不憫な妹の面倒を見ようと、気持ちを強く持った。

税関長宅では二人は雇えないということを確認していた。その上で妹のために住み込みで働ける食堂を紹介してくれていた。不慣れな地で、口下手な妹が一人で働くことには心配があった。なによりも、妹が怯えて頻りに「姉さんと一緒に働きたい」とせがむので困惑した。食堂は手不足とのことで、二人でも可能だった。

キヨにとっては、税関長宅を離れることは後ろ髪惹かれる思いだ。

ご夫妻の気遣いにより、貧乏で無知で粗野だった自分を人並みに成長させてくれた。 慣れ親しんだ居心地のよい環境を変えたくなかったし、受けた恩義を仇にすることに心が痛んだ。

苦慮した末にキヨは決断した。奥様に、胸の内を話し理解してもらえた。代わりの人への引き継ぎを終え、妹のいる食堂へと転職した。

続く・・・

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